第6章 変わらぬ愛の花言葉
夕日が差し込む美術室で、キャンバスに筆を動かす王陵は少し離れて立っている彼女に話しかける。
「———それで、私に相談事って何かしら?」
———川原崎加賀美さん。
彼女、川原崎加賀美は以前、幼馴染の霜月美佳から言われたことに忠実に、王陵璃華子に相談をもちかけていた。
「……葦歌ちゃん」
その名前に王陵は筆を止める。
「大久保さんの件なんです……。彼女、もう3日続けて欠席してて……その……」
川原崎は両手を合わせながら話した。
「心配なのね? 川原崎さんは友達思いね」
その言葉に川原崎は絵を描いている王陵に歩みを進めながら「彼女、私の幼馴染で」と話す。
———川原崎の目には”彼女”が見えた。
キャンバスには、彼女の幼馴染と見て取れる女性が中心には描かれていた。青い薔薇が彩られたその絵は生々しく見えた。
「これは……っ」
手を握りしめながら川原崎は王陵に話しかけた。
「えぇ。彼女、”素材”としてとっても魅力的だったから。私の創作のために協力してもらったの」
「……素材?」
意味がわからずにそう尋ねる川原崎。
「——女の子同士の友情って素敵ね……。それはそれでモチーフとしてとっても刺激的かも……」
向かい合わせになる二人。
「……えっと……」
彼女が言葉をもらす。
「葦歌さんを展示するにあったって、そういう志向もいいわよね……」
王陵は彼女を抱きしめるようにして手を首に回した。
———プツ、と音がして彼女の視界は真っ暗になった。
再び彼女が目を覚ますと、そこにはガラス越しに映る幼馴染の姿があった。その光景に彼女は目を大きく開かせ塞がれた口から叫びをあげ、縛られた両手足をジタバタとさせた。
「……幼馴染との感動の対面……」
コツ、コツと足音が響いた後に王陵の声が聞こえた。
「———心揺さぶられる場面よね」
ほんっと、泣かせられるわ。と言う王陵の顔は逆光で見えない。叫び続ける彼女を目の前に王陵は喋る。
「この感動を、もっともっと大勢の目につくところで再現したいって、そう思ってしまうのが……」
———やはり表現者としての、業かしらね。
そう言う王陵に対して彼女は悲鳴をあげ続けた。