第3章 刹那の平穏
——金眼の二人の目が混じり合う。
アンティークゴールドの瞳が対になる。神秘的な目の色をしている彼らの瞳は濁るようで、濁らない。
二人は黙ったままじっと見つめ合っていた。その雰囲気はもう一人の立ちっぱなしの男、チェ・グソンから見ても温かい雰囲気に見えた。
ソファーの窓側に座っていた彼女は目を正面にふっと向けると立ち上がり、掃き出し窓の前に移動した。窓を開けるとすぐ、彼女が毎朝使うバルコニーがある。彼女はガラス越しにバルコニーから見える景色を眺めた。そして言葉を出す。
「貴方達は当分ここには来ないのよね」
貴方達、そう呼ばれた一人である金眼の持ち主の彼は気にする様子もなく彼女の台詞に答える。
「あぁ。すまないね、亜希を一人にさせてしまって」
立ち上がった彼女に顔を向けてそう謝る。すると彼は立ち上がって右下へと目線を落とす。その顔は若干寂しそうな表情であった。が、次の瞬間落としていた目を正面に向けて「だけどね」と言い放ちこう口を開くのである。
「……僕をどこまで楽しませてくれるのか、そう思うと気持ちが高揚してしまうんだよ」
そう言う彼の瞳の奥は、深くて突き刺さるような目力だった。彼は楽しそうな様子であったのだ。
「グソンさん、あなたってばいつも立ったままよね」
「えぇ。お嬢と旦那に快適な時間を過ごしてもらえれば十分満足ですから」
「……偶には座って僕達と一緒にお茶を飲みなよ」
「そうよ、しょうちゃんの言う通りだわ」
「時々自分の淹れた紅茶を自分で確かめることも大切なんじゃないかい? それに、休むことも大事だと僕は思うけどね」
「……………」
「うふふっ、もうっ、しょーちゃんったら……グソンさんが困ってるわ」
「………何か変なことを僕が言ったかい?」
「きゃっ、ちょっ、ちょっと! なんでこっちに来るのよ!?」
「おや? 分からないとでも言うのかい? 僕は今亜希に聞いているんだよ?」
「いやっ……ご、ごめんって!! 離してちょーだいっ」
「……相変わらず仲睦まじいご様子でいらっしゃいますね」