第4章 失恋の先
「こんな寝癖でダサい格好してれば勝手にキライになってくれると思ってたのに、なんでニコニコニコニコしてんの?」
私は、ショックで何も言えなかった。
「そんなニコニコ笑って、こんな俺でも好きなの?」
先輩が、嘲笑いバカにした態度でそう言う。
私はとうとう我慢ができなくなり、うつ向き涙が溢れてしまう。
「ご、ごめんなさいっ!!私ッ……」
そう言うと私は急いで店を出てそのまま走り出す。
悲しくて苦しくて胸が押し潰れそう。
「もうやだっ…本当に消えたいっ」
涙がポロポロ溢れて前が見えない。
その時私の腕が、誰かにぎゅっと掴まれる。
驚いて振り返るとそのまま抱きしめられる。
「…ッッ??」
驚き過ぎて動けず何も言えない私を、その人はぎゅっと抱きしめる。
「ぼくは…貴女の笑顔…好きですから…」
優しい言葉が私の上が降ってくる。
その人の抱きしめる腕が緩くなり、そっと顔を覗き込む。
「あ……」
「ずっと…貴女を…見てました…」
その人はあの私の行きつけのカフェの店員さんだった。びっくりしてマジマジ姿を見れば、彼はエプロンをしたままだ。
「え?あ、あの!!お店!!仕事中じゃっ!!」
私は、彼に告白されているにも関わらず仕事の心配をしてしまう。
「ははっ…大丈夫です。店長が行けって言ってくれましたから」
その言葉を聞いて私は顔を真っ赤にする。
彼は優しく私の頬を撫でる。
「こんなタイミングでこんな事言うなんてつけ込んでるみたいでイヤだけど…ぼくの気持ちを知って欲しいんです…貴女がずっと好きでした」
私はポロポロと涙を流す。
彼はその涙を指で優しく拭ってくれる。
「返事なんていらないんです。今は正常な判断も出来ないだろうし…だけど、ぼくが貴女を好きだって事…覚えててください…」
そう彼が恥ずかしそうに言ってくれたから、さっきまで押し潰されそうだった胸が、今度はドキドキとうるさく痛くなる。
「はい……」
泣きながら笑う私を見て、彼も同じ様に瞳を潤ませながら笑う。
「あ、そろそろ戻らなきゃ…そうだ、これ…ぼくの番号よかったら…夜にでもメールか電話ください。イヤなら無視してください」
彼は紙に自分の番号を書くと私に渡し、そっと私の頬を撫でて、名残惜しそうに走って行く。
私は彼の背中を見えなくなるまでずっと見つめていた。
【end】