第2章 はじめての
「ねぇ…キスの…練習しない?」
「はぁ??」
私がそう言うと、幼なじみのコイツは信じられないという風な声を出す。
「何いってんだ?お前…練習とか、別にいらないだろ」
「そうかなぁ?練習は、必要だと思うよ?…彼女…出来たんでしょ?一度もキスしたことないなんてカッコ悪くない?」
私はずっと彼が好きだった。
小学生の頃からの幼なじみだし、中学生そして今の高校までずっと一緒だ。
家も近いし、私はいつか付き合えるんだと思っていた。
好きだと伝えたことはないし、好きだと言われたこともないけどそうなる運命なんだと勝手に決めつけていた。
それが勘違いだったと気付いた時には遅かった。
彼女が出来たと言われたのだ。
「あぁ…まぁそーだけどよぉ…でも、彼女いるのに他の子とキスとか…ダメだろ」
「普通はね、だけど私たち幼なじみだし兄妹みたいなものじゃない…だから大丈夫練習になるよ」
私はもっともらしくデタラメなことを言う。
悔しくてたまらない、彼女になるのは私なのに…
せめて…彼と初めてのキスをしたい。
このキスをしたらあきらめるから…。
「でも、お前に悪いだろ…初めてが俺とか…」
彼は気まずそうにそう言うが、私はなんでもない風に笑う。
「大丈夫!!お互い練習って思ってるんだから初キスにはならないんだよ?あんたが恥かかないように協力してあげるって言ってるんだからね?」
彼の為に、練習、なんでもないことを強調する私は悪い女だ。
「だからほら、ね?でも、練習だけどちゃんと本番みたくしなきゃダメなんだからね…」
私はそう言うと、彼の手を私の頬に当てさせる。
私は上を向くとキスをする体勢になる
「…わかったよ…」
そう言うと彼の唇が近づき私は目を瞑る。
そっと唇と唇が触れた…私のファーストキス
そっと目を開けると彼と目が合い真っ赤になってしまう。
「え?」
真っ赤になる私を見て彼も真っ赤になった。
「れ、練習台になってあげたの感謝しなさいよね!!」
私はそれだけ言うとその場から走り出す。
嬉しさと悲しみの両方の複雑な気分のまま…。
【end】