第5章 でしゃばって焼け
「オレ、ちょっと用事を思い出した。二人はそこのバルコニーの手摺の辺りで星でも見ていてくれ。いいか?バルコニーの手摺の辺りだ!今日はナントカ流星群が見えるとか見えないとか!」
そう言って、カリムはバタバタと走って部屋を出ていった。今日はカリムの部屋で、一週間に一度の3人の会合日。打ち合わせしたり、授業の話をしたり、いつも通り過ごしていたはずなのに。
「見えるとか見えないとか、って……」
明らかに嘘だろう。
「何だかわからないが、バルコニーに出てほしいらしいな」
ジャミルに手を引かれて、バルコニーに向かう。最近触れられることが増えて、ドキドキする自分と慣れてきた自分がいる。
好きな相手が触れてくるのは嬉しい。でも、そこまでだと自分自身に言いきかせる。自分を取り巻く環境を考えると、この恋は進めないのが得策だと思う。その方が、一緒に長く近くにいられるから。この、同僚という立場が壊れることが無いようにしたい。だからここまでにしなくちゃ。期待しないようにしなきゃ。
「それにしても、カリムは何処に行ったのかしら?」
「さあ、さっぱりわからない」
バタン!
ドアを勢いよく閉める音がして、ああ、カリムが戻ったんだなと思ってそちらを見た。
……カリムが突進してきている。
「カリムくん……?」
スピードを落とすこと無く、両の手を前に出してそのまま
ドンッ!!!!
「「え?」」
油断していた。まさかカリムが私たちをバルコニーから突き落とすなんて考えもしなかった。
「……っっ!!?」
「くっ……アーヤ!!」
ジャミルが私の服を掴んだ。だが受け身が間に合わない、と思ったその時
ビュウン!ドサッ!
「何?……魔法の絨毯?」
空飛ぶ魔法の絨毯は私とジャミルが乗っているのを確認すると、上空へと舞い上がった。
「2人でゆっくり話してこいよ!行き先はオアシスだ!」
「「はあ!?」」
「よろしく頼んだ。魔法の絨毯」
カリムはゆるりと微笑んで、絨毯が飛んでいくのを見届けた。
ジャミル。アーヤ。
確かにオレは鈍いんだろうが
やっぱり、人をみる目は確かだって今でも思うんだ。