第3章 プルプルの認識齟齬
「アーヤ、次の選択授業は同じだ。一緒に行こう」
「!?……え?」
今までに無いことだった。カリムの従者であることを隠して学園にいる私は、主人のカリムには週1しか会わないし、同僚のジャミルとは頻繁に会うとはいえ、人目を避けて話してきた。
男装して、相手の認識をずらす魔法をかけている身。近づきすぎて女だとバレても大変なので、普段は根暗で口数の少ない学生を演じてほとんど1人でいる。ジャミルとカリムは私が女だと知っているが、設定に合わせて話しかけないようにしていたのに。
ちなみに何で女がこの学園にいるかと言えば、それは「馬車が迎えに来てしまったから」だ。性別選別でミスがあったらしい。
当時、私が唖然とする中、アジーム家はカリムの護衛が増えると喜び、なんやかんやして学園に入れるようにしてしまったのだった。
「(ど、どうしたの?周りに人がいるところで私に話しかけるなんて)」
「(フッ……その焦った顔を何とかしろ。酷い顔をしている)」
この人はジャミルなのか?別人……まさか変装した刺客か?警戒心を強めて状況を把握しようとしたが
「(落ち着け、刺客じゃない。確認してみろ、ユニーク魔法で俺の周り観れるだろう?)」
ーーージャミルだった。
ところが、これで終わらなかったのだ。
「これから昼食か。いつも通り食堂の隅で1人で食べるつもりだろう?今日は弁当を多めに作ったから一緒に食べよう」
「その荷物、重そうだ。俺も持とう」
肩を叩いたり、頭に手をのせたり、いちいち触れてくるんだけども!
そのまま一週間経ち
「部屋まで送ろう」
カリムの部屋でジャミルも入れて3人で話した後だった。ねえ、普段ならそのまま部屋に残ってカリムの就寝準備をするじゃない。
「疲れた顔をしている。ちゃんと休めているか?」
ジャミルの手が頬に触れ、親指が優しく撫でた。
「だ、大丈夫。ねえ、どうしちゃったの?最近何かおかしいわよ。ジャミルこそ体調悪いんじゃないの?」
頬にに熱が集まっていく。恥ずかしくて直視できなくて
「そうか?別に悪いところは無い。ただ最近は、遠慮しないでやりたいようにやっているだけだ」
いやいやカリムに遠慮しないとは言ってたけれども。待って、本当にどうしちゃったの!?
ジャミルの嬉しそうに上がった口角には気づかなかった。