第90章 船長勝負
「おれ大人になったら水琴連れて海賊になるんだ!」
その宣言は唐突だった。
独立する!と言ってダダン一家を飛び出した盃兄弟にいつものように差し入れを持ってきていた昼下がり。
水琴の用意した料理を食べながら、ルフィは高らかと言い放った。
「……んなっ、駄目に決まってんだろ!!」
会話の流れをぶった切る言葉に唖然とすること数秒、一番早く我に返ったのはエースだった。
片足を立て向かいに座るルフィを睨みつける。
「え~?なんでだよ!水琴も海賊だったんなら別にいいじゃんかー」
「お前が連れてくのが駄目だってんだ!」
「何でだよー!エースには関係ねぇだろ?!」
「そ、れは…」
本当は関係大ありだが、ずっと前に約束したからおれが水琴と海賊になるんだと反論するのは、どこかルフィのように子どもじみているように感じて言い出せず言葉に詰まる。
自尊心の高い微妙なお年頃である。
しかしそこを逃すルフィではない。エースが失速したのをいいことにルフィはすかさず勢いづいた。
「おれは水琴と海賊やりてぇ!!」
「まぁ確かに水琴料理うまいしなぁ」
「え、駄目だぞ!水琴はおれと海賊やるんだ!」
「まだ確定じゃないだろ?水琴の海の知識はすごいし、仲間になったら楽しそうだ」
いつもなら仲裁に入るサボまで乗っかり、収拾がつかない事態にどうしたものかと水琴は頬に手を当てた。