第88章 風邪には甘いレモネードを
水琴が風邪を引いた。
今フーシャ村で流行ってる風邪らしく、感染力が強いため水琴の寝ている部屋は入室禁止となった。
ごめんね、とドア越しに弱々しく聞こえる声に早く治せよと言いおきエースたちは外に出る。
「しばらく稽古は中止だな」
「風邪なら仕方ないもんなぁ」
「水琴と遊べねーのつまんねーなぁ。……ところで、風邪ってつらいのか?」
「「 さあ 」」
ルフィの言葉に兄二人は揃って首を捻る。
生まれてこの方風邪を引いたことの無いエースには風邪のつらさはいまいち分からないが、先程の水琴はなかなかにしんどそうではあった。
「あの調子じゃ起きるのは無理そうだな」
「じゃあいつも世話になってるし、今日は俺たちで家事やるのはどうだ?」
サボの提案に分かっているのか、おれやるー!と真っ先にルフィが手を上げる。
「料理……は難しくても、掃除や洗濯ならなんとかなるだろ」
「そんくらいならな。しょうがねェから手伝ってやるか!」
「よーっし、やるぞー!」
おー!と自信に満ちた拳を突き上げる。
かくして三人の一日は幕を開けた。
***
「まずは掃除だな!」
箒片手にサボが広間を見渡す。
朝食が済んだ後なので食べこぼしが散乱し水はテーブルの上に零れ酷い有様だ。
「まずは食器を流しに運んで、テーブルの上から片付けるか」
「食器だな!おれに任せろ!」
やる気に満ちた様子のルフィが机に飛びつき積まれた皿へと手をかけた。
上段数枚の皿が滑りガチャリと音を立てる。
「待て待て!ルフィはこっち頼む!」
慌ててサボはスプーンや箸などまとめたものを指さす。
あの様子じゃ数秒後には大量の破片に様変わりしてしまう。
そうか?と特に気にしていない様子のルフィは素直にサボに言われたスプーンや箸を流しに運んでいった。