第31章 選んだのは
庭で子どもたちが遊ぶ声を聴きながら、シスターは自室でアルバムをめくる。
一人一人の成長が大切に保存されているそれをゆっくりと追う眼差しは優しい。
ふと、その手があるページで止まった。
そこには新品のランドセルを背負い満面の笑みを浮かべる水琴が映っていた。
その写真をそっと撫でる。
___あのね、シスター。
両親のことで喧嘩をして飛び出していった日。
戻ってきた水琴は仲直りをした後内緒話をするようにそっと打ち明けた。
どこまでも続く水平線。そこで出会った白い髪の“父親”
___だからね、大きくなったら私を迎えに来てくれるの。
___その時はシスターも一緒ね!
いつの間にか、水琴はそれを忘れてしまったけれど。
泣きながら語った水琴の話が幼少期のそれと被る。
「……その人は、約束を守ってくれたのね」
会うことは叶わなかったけれど。
きっと、水琴は幸せになるだろう。
娘の幸せを祈り、シスターはそっとアルバムを閉じた。