第13章 思い出のあの公園 《主人公目線 》※補足
津軽さんは、わたしを見ている。
そして、津軽さんの唇が、ゆっくり動いて、はっきりと言った。
【瑠璃子、ずっと、俺の傍から、離れるな】
わたしの目から、涙がぽろぽろ頬を滑り落ちてゆく。
それから、改めて、津軽さんは、言った。
「シートベルトして、キミと行きたいところがあるから」
津軽さんは、チラリと時計を見て、林道から車を出した。
時刻は、20:16分になっていた。
「今日、遅くなってもいい?」
「津軽さんが、大丈夫なら、わたしは大丈夫です」
それから、津軽さんは、F山を降りると、いくつかの山間を通り抜けた。
そして、辿り着いたのは、あの思い出の公園だった。
津軽さんは、公園の駐車場に車を止めた。
そして、津軽さんは、車から降りると、助手席のドアを開けて、わたしに手を差し出した。
「おいで」
わたしは、津軽さんの手を取った。
「これで、三度目だね」
「はい」
公園の街灯の下を歩く。
夜風が、わたしと津軽さんの間を優しく吹き抜けてゆく。
公園の中央にある、噴水の前のベンチに、どちらからかともなく、座った。
津軽さんの腕がわたしの頭に回って、わたしの髪を、優しく何度か梳いた。
そして、わたしの後頭部に手が差し込まれると、ぐっと引き寄せられて、わたしの唇に柔らかな津軽さんの唇が、重ねられた。
大事な物を、優しく優しく食す様な、津軽さんのキス。
頭の芯が、甘く痺れて、身体から、力が、抜けてゆく。
津軽さんの舌は、柔らかくわたしの舌を絡め取り、自分の口内に少しづつ、煽る様に誘い込んでゆく。
優しく、繊細に味わっていかれる様なキスに、少し焦れったくなった時、
津軽さんの唇が、離れて、目を開けると、津軽さんの真っ直ぐな瞳に、ぶつかった。
「今夜、俺の物になってよ」
「え....!?」
「良いって言って」
「..........」
わたしが、答えに、詰まっていると、津軽さんが言った。
「沈黙は、肯定って取るよ。いいの?」
わたしは、ゆっくり頷いた。