第9章 潜入捜査〈主人公目線〉
津軽さんと百瀬さんは、デスクで膨大な量の【愛の下僕会】の情報について調べている。
わたしは、殺害された家族について調べていた。
【愛の下僕会】に殺害されたのは、入信に反対していた信者の家族だった。
当初、この殺害された信者の家族は、【愛の下僕会】に入信を強く反対した事が殺害原因とされていた。
この殺害された信者の家族は、〈【愛の下僕会】被害者の会〉に、入会している家族だったからだ。
しかし、他の接点を調べていくと、
この殺害された信者の家族は、現財務大臣の大野の熱心な講演会のメンバーだった。
そして、【愛の下僕会】が急速に教団を大きくしていった時期は、
前任の財務大臣の木内の就任期間と一致している。
前任の木内財務大臣の辞任は、突然の辞任で、持病の悪化だと言う事だった。
もし、前任の木内財務大臣が、現財務大臣の大野に【愛の下僕会】との黒い繋がりを暴かれていたとしたら、突然の辞任の決定的な原因となる。
わたしの中で、大きな点と点が繋がり始めていた。
わたしが、この件を津軽さんに伝えると津軽さんは、
「モモ、出掛けるぞ、香月は、前財務大臣木内と【愛の下僕会】の教祖との繋がりをもっと洗え」
と言って、公安課を出て行った。
わたしが、津軽さんの背を目で追ってると
デスクに、缶コーヒーが、置かれた。
振り返って見ると、後藤さんだ。
「香月、頑張ってるな。まあ、コーヒーでも、飲んで、休憩しろ。休憩も大切だぞ」
そう言って、わたしの頭に、ぽんと手を乗せると、自分のデスクに戻って行った。
あの最初で最後のデートの日から、わたしと津軽さんには、大きな溝が出来ている。
百瀬さんも、公安課の元の教官達も気付いているけども
何も言わない。
津軽さんが、わたしにちょっかいをかけてた頃が随分昔の事に感じる。
(あー!、駄目!駄目!わたし!しっかりしろ!今は、この【愛の下僕会】の捜査に集中しよう!津軽班のためにも!)