第2章 給湯室でドキドキ〈津軽目線〉
捜査先で不手際があり、公安課のデスクに戻った俺は、
ウサの姿を目で探していた。
(ウサは、ウサのデスクに居ないか)
時計の針は、12時48分を指している。
お昼休憩で、外に出ているなら、時間にきっちりしたウサの事だ。
もうそろそろ戻って来るだろう。
ウサが戻って来る前に、タバスコココアが飲みたくなった俺は、給湯室に向かった。
給湯室に行くと、顔を見たくて仕方なかったウサがコーヒーを飲みながら、花柄の手帳を見つめている。
何を見てるのか覗こうとした俺の耳に届いたウサの声。
「あのお花畑の公園、今度はゆっくり行きたいな」
ウサが、あの俺が連れてった公園の事を言っていると気付くのに時間はかからなかった。
だって、ウサの視線の先にあった花柄の手帳のページは、あの両想い記念日の7/11の日付にピンク色の蛍光ペンで丸く印が付られ、横にやけに丸っこい字で津軽さんとだけ書いてあったから。
(くっそ!!可愛い。可愛いが過ぎるだろ--!!)
壁に頭をガンガン打ち付けたい衝動をグッと堪えてウサに言った。
「何?花畑の公園でキスしたかったって?」
「ぎゃっ!!!」
俺の登場は、またも、ホラー映画のペニーワイズ扱い。
ウサの顔を覗くと、真っ赤になっている。
ウサとしては、俺には、絶対知られたくない感情だった様だ。
「つっ、、津軽さん!今日は丸一日捜査ではなかったんですか?」
真っ赤な顔で手遅れの質問返しをするウサに、追い打ちをかける様に言ってやった。
「ウサちゃんに早く会いたくて、急いで仕事片付けて、戻って来たんだから、褒めてよ」
出来るだけ余裕もって言ってるとウサに思わせたくて、タバスコココアを入れながら言った。
「それよりさ、ウサちゃん、あの公園もう一回行きたい訳?」
ウサの眉毛が大きく垂れた。
ウサは小鼻を小動物みたいにピクピクさせ返事に困っている。
(そこは、素直にはい!だろ?)
って思ったけども、キスしたかった?とか言った事が、ウサの返事を戸惑わせている事は明らかだった。
「そこは、そうですだろ? ウーサちゃん」
「今週の土曜日行くよ、あの公園。ウサちゃん公休だから、俺のお弁当係頑張って」
ウサが、ぽかんとしたマヌケ顔で俺を見つめている。
ああ、女の子とのデートがこんなに待ち遠しいなんて感情初めてじゃあなかったか?