第1章 給湯室でドキドキ 〈主人公目線〉
午前中ずっと 先週の潜入捜査の報告書と、百瀬さんに押し付けられた大量の書類の山のチェックとPC処理でバタバタしたわたしは、
お昼休憩が10分ほど余って、給湯室でコーヒーを入れている。
良い香りを立てているコーヒーを口に運びながら、わたしはプライベート用の手帳の先月のページを捲った。
津軽さんと両想いになって 気付けば、二週間以上も経過している。
先月の忘れられない日。
7/11の日付けの上には、蛍光ペンのピンクで丸く囲って印が付けてあり、横には、津軽さんと名前を書いている。
片思いの時は、嫌われてなければただそれだけで良かった。
自分の心を隠しながらでも、津軽さんの下で働ける事が喜びだった。
津軽さんも多少なりとも、わたしに好意を持ってくれてるって知った時は、天にも昇った様な嬉しさだった。
でも、両想いって、分かってみると余計にもっともっと津軽さんの傍に居たいって思う心が、日々重ねられ、募ってゆく。
恋愛禁止の銀室でのこの感情は、下手をすると津軽さん本人に多大な迷惑をかける恐れのある感情だと重々承知している。
でも、一緒にデートだってしたい気持ちは抑えられない。
「あのお花畑の公園、今度はゆっくり行きたいな」
ポロっと小さく零れた本音..。
「何?お花畑の公園でキスしたかったって?」
庁内に居ない筈の津軽さんが給湯室ににゅっと現れた。
「ぎゃっ!!!」
(きっ!聞かれてたーーーーーーーーーー!!それも、寄りによって、本人津軽さんに!)
(デリカシー!!!って、叫びたいのをグッと堪え)
「つっ、、、津軽さん!今日は丸一日捜査ではなかったんですか?」
「ウサちゃんに早く会いたくて、急いで仕事片付けて、戻って来たんだから、褒めてよ」
津軽さんは、ココアにタバスコをドバドバ入れながら言った。
「それよりさ、ウサちゃん、あの公園もう一回行きたい訳?」
津軽さんは、給湯室の壁に寄っかかってココアを飲みながら、わたしをじっと見つめている。ずるい!って言いたくなるほどの男の色気を漂わせて。
(ここは、はいって言うのが正解だよね...?いやいや、そこ肯定すると
キスしたかったですっ!ってなるわけぇ!? どう答えるべきか悩んでいると.....。
「そこは、そうですだろ?ウーサちゃん」