第3章 初めてのデートの約束 〈主人公目線〉
土曜日が公休って事で、津軽さんの公休日前日の金曜日は、忙しい様だ。
百瀬さんと出っ放しで、公安課のデスクに座っている事はなかった。
お陰様で、わたしの方は、激マズのお菓子を無理矢理口に放り込まれる事も、パシらされる事も、百瀬さんに、椅子の後ろから蹴り上げられる事もなく、内勤仕事をバリバリとこなしてゆけた。
いつもなら、津軽さんの不在を寂しく思う所だけども、明日は、気持ちが通じ合っての初めてのデートだ。
そして、お弁当係に津軽さんに任命されたからには、美味しいお弁当を作らなければいけない。
あの激マズのお菓子が美味しいという味覚が桁外れにズレた津軽さんのお弁当って、前は激辛酢イカお握りを渡した事があったな、あの時は美味しいって言ってくれた。
(お握りの具、胡麻苺味噌でいいかなぁ....最近良く食べてるし)
そんな事を考えながら、ノートパソコンの書類を送信し終わった時スマホにLINEの着信音がした。
津軽さんだ!
就業ギリギリのLINEに、悪い予感が心に広がる。
『帰りちょっと遅くなりそうだから、ウサちゃん、先に帰ってていいから』
ああ、やっぱり.....。遅くなるのか.....。
今、津軽さんが追ってる事件は、わたしは捜査から外されていた。
機密性が高い事件だと言う事のみしか分からない。
楽しみ過ぎる事って、期待外れに終わる事が多いのが、世の常だ。
返信をする言葉に注意する。
『お疲れ様です!明日無理しないで大丈夫です。わたしも部屋の掃除とか、色々ありますんで..たまの休みだし(笑)』
出来るだけ、津軽さんが気楽に断れる様に、文章を作ったつもりだった。
LINEは、直ぐに既読になって返信が来る。
『は?お弁当係が何言ってるのよ?』
え!でも 今日遅くなるんなら、津軽さん無理してるんじゃ...
暫くLINEの返信に困っていると、またLINEが来た。
『明日10:30、マンションの駐車場、ウサちゃん遅れないでよ♥』
御丁寧に♥マーク付き!
なんだかんだ言って津軽さんは、意外と不器用で、優しくて約束は必ず遅れてでも守る人だった。
そんな津軽さんだからこそ、
味覚が桁外れにズレてても、執念深くてねちっこくて面倒臭くても、好きでい続けたい自分がいる。
津軽さんだって楽しみにしてくれてるから、多少の無理をしてでもデートしようとしてくれてるんだよね?