• テキストサイズ

手のひらの虹 【恋人は公安刑事】津軽高臣編

第5章 思い出の公園へ〈主人公目線・津軽目線〉


ウサの戸惑いなど、俺は無視してウサの部屋に上がり込んだ。

ウサをどうやって抱き締めようかしか頭になかった。

テーブルの上にウサがお昼ご飯の為に作った弁当箱があった。
蓋を開けて見ると、豪華で美味しそうなおかずに、お握りが彩り良く入っている。

ウサはこの弁当を俺だけの為に必死で作ったのかと思うと、もう
俺の心の防波堤など、一気に崩壊して、傍におどおど立つウサを抱き締めた。

ウサからは、俺の好きな何時ものウサの匂いに混じって、少し女の子らしい柔らかな匂いがした。
きっと俺の為に着けたのかと思うとウサが愛しくて愛しくて堪らなくなる。

「瑠璃子ありがとう」

掛け値なしの、俺の本音だった。

腕の中のウサの緊張が伝わって来たと同時にウサが言った。

「こ、恋人っぽい!」

こいつ、この後に及んで、何を言ってるんだと思ってからかう様に言ってやった。

「俺達って恋人じゃあないのか。そんな事言うならここでキスするよ」

(いや、マジでキスしたい!今ウサに)

「え、遠慮しておきます!」

ウサらしい言い草だけども、変に不安を感じた俺は、腕の中にいるウサの顔を覗き込んで言った。

「何それ遠慮しておきますって、俺ってウサちゃんのただの上司?」

ウサは、じっと俺の顔を見つめてから言った。

「津軽さん昨日寝ましたか?」

ああ、そうだ、この子はいつだって、自分の事よりも他人の事を心配する子だった。

いつだって、ウサは俺がずっと渇望していた様な柔らかな暖かさを与えてくれる。
いとも簡単に、そして、それが当たり前の様に。

俺の中の強い雄の衝動が爆発しそうだった。
出来るなら、ここで、ウサのベットにウサを押し倒して、自分だけの物にしてしまいたいくらいに。

何とかそこは、壊れそうな理性で押さえた。

今日は初めての想いが通じ合ってのデートなのだから、ウサの願いを叶えて、ウサを大切に扱いたい。


なのに、俺の理性は、ウサの部屋を出て、数分もしないうちに崩壊してしまった。



ウサの頬にキスをした時はまだ余裕があった。
いつもの俺とウサのおふざけが、そこにはあった。




だけども、昨日抱いた女が、俺の腕に長い爪で付けた薄い赤い引っ掻き傷が目に入って俺の中の暴力性が爆発した。



こんな時にまで、俺は、昨日の出来事を思い出さなければいけないのか!


/ 66ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp