第25章 血に抗え
謙信様が佐助君に向かって刀を抜こうとするのを彼自身が慌てて止めた。
「謙信様、ステイステイ。落ち着いてください。」
訳の分からない単語が出てきて頭に疑問が浮かんでいる私達の言葉を代弁する様に家康さんが話す。
「……その、すてい…?って言うのはよく分からないけれど、結局何が言いたい訳?」
私達が不思議な顔で彼を見ていると彼のメガネが一瞬光った様に見えた。
「どうやらこの壁、ここ最近になって出来たみたいです。……だってほら。」
ペタっ…
彼がその土壁に触ると、『手に土が付いた』。
その光景に私達は目を見開く。
「なるほど、この土壁は意図的に作られたものか。……だとすれば。」
信長様は話の途中で刀を抜き、その土壁に向かって思いっ切り振った。
ヒュッ…ホゴッ!!!!
信長様が切った壁がいとも簡単に崩れ去り、階段が見えた。
「…これは気付きませんでした。凄いですね、佐助君。」
私が佐助君の方を向くと彼は少しだけ頬を緩ませて嬉しそうな顔をした。
「一応、忍びだからね。隠し扉とかそういうのは得意なんだ。」
話している彼が大分誇らしそうに話すので少しだけ可愛いと思ってしまった。
「ふふっ…そうですか。」
そんな私達に横槍を入れてくる人が一人。
「ほら無駄口叩いてないで、さっさと行くよ。」
家康さんが面白くなさそうに私達の間に入ってきた。
「ふふっ…は〜い。それでは、行きましょうか。」
私はこれ以上彼を刺激してはいけないと思い大人しくすることにした。
「…早くしてよね、ほら…。」
不貞腐れながらも私の手を取って先導してくれる彼に少しだけ可愛いと思ったのはないしょだ。
「…随分と地下まで来たと思うんですけれど。」
雫が滴り落ちる音が響く。
私の声も反響しているみたいだった。
「結構、長い階段だね。作った人の苦労が伺えるな。」
「…話の論点ずれてない?」
よくわからない佐助君の言葉に呆れた顔をする家康さん。
「どうでもいいがさっさと斬らせろ。」
「謙信様、それはダメです。抑えてください。もうすぐですから。」
「貴様ら、静かに出来ないのか。」
何故だか騒がしい階段を下りきって私達は、ようやく古民家の様な場所を見つけた。
「地下に、建物?…人は居るのでしょうか?」