第25章 血に抗え
私は家康さんの毒舌に溜息をつく。
「はぁ…でも、それもあながち間違いではないですよね。」
その言葉に皆さんが不思議そうな顔をする。
「しのぶさん、どういう事?」
佐助君が先導して質問して来た。
「…前にも、お話しした通り、私の戦い方は特殊でして……。その、結構力を入れちゃったな〜って。」
私が苦笑いしながら言うと、信長様がニヤニヤと笑い始めた。
「なるほど、やはり貴様の拳は強烈と言う訳か。……この俺に手刀をした女だからな。」
「…あの、それいつまでも引っ張らないでくれます?いつまでも同じ事言ってると嫌われますよ。……ねぇ、家康さん?」
私はちらりと横で馬に乗っていた家康さんを見た。
「…なんで、俺の方見て言う訳?」
「ふふっ…ご自身の行動を振り返ってみては如何でしょう?」
「…はぁ…本当に、面倒くさい女。」
そう言っている割には、家康さんは私の方を見て少しだけ口角を上げた。
あら、いつもなら『喧嘩売ってるの?』とか言ってきそうなのに…。
怒らせようと思ったのに、からかいがいがありませんね……。
……何だか、さっきからずっと家康さんの行動が変です。
こう、私に対してやけに甘い様な……?
はっ…私何を変な事を考えているんですか!!
今は戦の最中ですよ!!!
こ、こんな…乙女みたいな事は…!!!
私がもんもんとしていると信長様が呟いた。
「見えて来たぞ、どうやらあれが鼠共の住処らしい。」
そう言って信長様が指を差された方向には、周りには人の気配が全くない、古い民家があった。
「…中には一人も居ないみたいですね。」
「そうだな、ちっ…逃げ足の早い鼠共だ。」
信長様は眉間に皺を寄せてちっ…と舌打ちをした。
まあ、取り敢えず何か手掛かりが残っているかも知れないので辺りを捜索中だ。
「うぅ〜ん、中々見つかりませんね…。せめて、何か一つでも…」
「皆さん、ちょっと此方に来てください!!」
「……っ?!」
突然の佐助君の呼びかけに私達はその場所に集まっだ。
「…で、ただの壁じゃん。」
そう、家康さんの言うとおりで其処にはただ壁があるだけだった。
「…佐助、世迷言を申すな。…斬られたいか。」