第15章 おかえり
『お早いお戻りですね。後方支援の後処理は既に。秀吉様と光秀様は?』
『明後日には着くだろう。』
信長は、足早にの部屋に向かった。
その後を追って、の部屋に家康、政宗、三成、佐助が入る。
は、ゆっくりと呼吸をして眠り始めていた。
『朝から、うっすらと意識が浮上したりを繰り返しています。咲、寝入ったの?』
『えぇ、先程…』
『傷は?』
『血も止まり、腫れも赤みも引けてきました。化膿もしてません。』
『そうか…』
ガシッ!
信長は、の肩を抱き寄せた。
一同が、一見乱暴な所作に驚きを隠せない。
『の、信長…さま?』
『!』
大声でを呼ぶ信長の声が、城内に響いた。
『こっちだ!!!
こっちだ!戻ってこい!』
『信長…様。』
『!!』
信長の叫ぶような鬼気迫る信長の姿と声を、四人はただ見守っていた。
『!!戻ってこい!』
何度目かの呼び掛けの後。
佐助は、の足がピクリと動いたのを見た。
『家康公!さんの足が!』
『あぁ…』
『そうだ!!こっちだ、戻ってこい!』
「っ…んっ。」
『『!』』
『よし、こっちだ!戻ってこい!』
ふぅ、っと息を吸うとは思い切り吐いた。
の左手が空をつかむように伸ばされる。
その手を力強く信長が握りしめた。
そして、一番の大声で叫んだ。
『!』
ゆっくりとの瞼が開いた。
『さまぁ!』
咲の泣き声混じりの声が響く。
政宗、家康、三成、佐助が布団の周りに座り込み、を見つめた。
『…。わかるか。』
信長の声に応えるように、ふわっと、微笑んだ。
『?』
「…、…が、…ま。」
小さく小さく聞こえたの声に、信長はの頭を胸にかき抱いた。
家康は、俯き肩を揺らしながらの右手を包み込む。政宗もまた、家康の肩を抱き寄せ、自身の額を乗せた。
三成は天を仰ぎ、佐助が眼鏡をくいっと上げる。
それは静かな、静かな目覚めだった。