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暁の契りと桃色の在り処 ー音ー

第14章 約束


『案外呆気なかったな。』

西の小国の寄せ集めは、やはり其れほどの物だった。
将はいても、それに伴う統率がなく
結局は総崩れ。
政宗が拍子抜けした戦だった。

『御館様、戦の事後処理で確認したいことが。』

『あぁ、今向かう。』

早く安土に戻れるようにと、秀吉は手際よく政務を行う。
領地、領民、金、物。
本来は一月ほど滞在し、落ち着かせてから信頼できる大名に継がせる。
しかし、ここは西の国境。
秀吉も政宗も、置いては行けない。
加勢してきた大名数名に割り当て、戻るしかなさそうだ。

『…では、そのように。』

矢継ぎ早に秀吉へ指示を飛ばす。
それを的確にこなす、あやつも成長したな。

いつ、継がせても良さそうだ。

天幕に目を向けると、政宗が炊き出しを振る舞っていた。
おや、いつの間にか光秀が戻っていたな。

『ご苦労だった。』

『はっ、つまらない戦だったと政宗から聞きました。』

『あぁ。』

『別件の大名の方も、何もなかったように静かだと。』

『そうか。』

『安土にいる佐助の配下からも、目立った変化の報告はありません。』

『ならば、よし。三日後にここを発つ。それまでに事を納めよ。』

『はっ。』

『信長様、どうぞ。』

政宗が椀を寄越した。

『あぁ、頂く。』

温かなそれは、ゆっくりと胃に溶ける。
まるで、に包まれるように。

火を囲み腰かける。

ゆらゆらと揺れる炎を眺めると、急に睡魔がやって来た。





『ねぇ、ちょっと。起きてよ。』

誰だ?

『起きてってば。』

『…誰だ?』

『はぁ、やっと起きた。
こっちに来るのも時間かかるし…、やっぱりあっちが良かったなぁ。』

『誰だ、貴様。』

俺の目の前には、深紅の瞳に焦げ茶の髪を結んだ幼女が立っていた。

『誰かは…内緒。ねぇ、私の声聞こえる?』

『あぁ。ここはどこだ? …夢か?』

『正解、すごい!』

『貴様はなんだ?』

『内緒だって。 …それより。』

『なんだ?』

『早く帰って、安土に。』

『は?』

『安土で待ってるでしょう?』

『なんだと?』

『待ってるでしょう? 早く帰ってあげて。』




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