第9章 太陽に向かって
『そろそろ、お決めになられては?』
『…すべて持ち帰る、ではダメか?』
『それでは、が困るでしょうな。』
『選んだものを贈る事が女子の喜びに繋がると、書物にかいておりました。』
『…三成。いつも思うが、お前、どんな書物読んでるんだ?』
『織田軍の参謀は、博識だなぁ。』
『光秀様、恐縮です。』
秀吉、光秀、三成と堺に来て四日目。
順調に武器商の視察を終え、新しい銃や兵法書、武具を一通り揃え、手配をを整えた。
今日は、堺の市を視察しながら、光秀が探した堺で一番という小物屋や呉服屋、反物屋を巡っている。
への土産を探しに。
『紅はいかがですか?』
『沢山あろう?』
『女子は着飾りたいものです。この紅の色は、あまり安土では見ないものかと。』
『ほう、やはり安土一の人気者は違うな。』
『光秀!お前も選べ!』
『濃い赤ではなく、このような橙の混じったものがあやつらしい。』
『では、こちらに致しましょう。』
『おや、これは練り香ですね。』
『練り香?』
『女子は、その日の気分で様々な香りを楽しむようですよ?』
『…それも書物か?三成。』
『はい!』
『クックック。は桂皮が苦手と話していましたな。』
『あまりきつくないものがいいだろう。』
『こちらはどうでしょう?
店のものに聞けば南蛮からの品で、華の香だそうで。』
『…うむ。これとする。』
『こちらの、髪飾りも宜しいかと。紅や練り香の使い尽きてしまうものと共に、永遠に側に置けるものも喜ばれるでしょう。』
『…今日の三成は、秀吉より気が利くな。』
『お褒め頂き光栄です。光秀様。』
『三成、読んでる書物、今度貸してくれ。』
『喜んで。』
『髪飾りか。』
『こちらには櫛もありますよ?』
『ほう、漆塗りに小花と蝶の細工が見事だな。』
『所々硝子玉があしらっていますな。』
『キラキラしてる、などと様なら喜びそうですね。』
『これにする。』
『はっ、では勘定をして参ります。』
『秀吉、頼む。』
ふぅ、と一息吐くと俺は小物屋を出た。
まだ陽が高い。
活気のよい堺の市には、安土よりも多く露天も並んでいる。