第8章 私の誇り
「政宗、枇杷を甘く煮詰めてもらえる?」
『あぁ、任せろ。』
『俺は?』
「…応援、かな。」
『わかった。』
星空を眺めた翌日の昼下がり。
城の厨には、たすき掛けをした様と政宗様、家康様がいらっしゃいました。
なんでも、甘味を作るとか。
「そば粉と白玉粉、水と卵と砂糖を混ぜて…」
『大丈夫?』
「たぶん、大丈夫!」
『唐辛子は?』
「いらない!」
『ふっ、だよね。』
武将様と安土の奥方様が揃って甘味作り。
もう慣れてきましたが、やはり想像を越えることをなさる姫様です。
『枇杷は、こんな感じか?』
「さすが! じゃあ、次は火加減お願いね。」
『任せろ。』
「小さめに焼いて、皆にも配ろう。」
『ちゃんと、できたらでしょ。』
「家康、ちゃんと応援して!」
『はいはい、がんばれー。』
「…ちゃんと気持ち込めてよ。」
『火加減いいんじゃねぇか。』
「よし、焼くぞ!」
ジュワー
厨から、甘い匂いが風に乗って漂い始めました。
私は火傷などしないかと、厨を覗きました。
小判のような形のふんわりとした物を、様は沢山焼いていました。
「出来た!これに、餡と枇杷をのせて挟む!
できあがり。」
『へぇ。いいんじゃない。なんていう甘味?』
「…どら焼き。」
『よし、食うか!』
皿に沢山の甘味が並べられ、また縁側に腰掛けられました。
「はい、政宗。家康。」
『おう。』
『ありがと。』
「咲、弥七さん、吉之助さんの分もあるよ。」
まぁ、私達の分も?
本当に、誰にでも等しく関わる方だこと。
『餡と枇杷が甘酸っぱくて旨いな。』
『この焼いたやつも旨いよ。』
「信長様や、皆も好きかなぁ?」
『いいんじゃないか?』
『そういや、文が来てましたね。』
「え、誰から?」
『秀吉さんから。文を持ってきたのは、光秀さんの忍。』
「すごい組み合わせだね。なんて書いてたの?」
『無事に堺に着いて視察もほぼ終わるって。やっぱり信長様の手際が良すぎて、早く帰れそうだって。』
「良かった!」
えぇ、本当に良かったですね。
体調も落ち着いて、こんなに笑って過ごされて。
このお二人からの愛情のお陰ですね。
『あんたが元気に過ごしてることと、丘で落ち合うかって話を書いて持たせたよ。』