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暁の契りと桃色の在り処 ー音ー

第7章 俺とあいつと虎と鹿


「あとね、お茶菓子の甘味当てをしたりするよ。」

『…くだらない。』

「光秀さんの的中率がすごいの。」

『鉄砲の腕だけじゃないんだな、あいつ。』

なんだかんだ、安土の奥方は幸せなんだな、ってほっとした。





「お腹一杯だね。ご馳走さま。」

『よし、じゃあ…』

俺は広間の襖を開けた。

「政宗?」

『三成がな、この数日は星が降るって言ってたんだ。』

「流れ星?」

『ほんとかどうか、怪しいけどね。』

『500年先の世でもあったか?』

「うん。でも、街の灯りが眩しすぎてあまり見えないの。」

『星より眩しいの?』

「うん。勿体ないよね、こんなに綺麗なのに。」

はそう言うと、草履を履いて庭に降りた。

『500年先の世…?』

廊下で控えていた咲が呟いた。

『あの子、時を越えてきたんだよ。…って言ったら信じる?』

家康が咲に聞いた。

「かぐや姫みたいでしょ?」


みたい、じゃなくて、かぐや姫なんだよ。

突然現れて、
魔王も狐も、
人たらしや書庫の虫も
天の邪鬼も

俺も。

軍神も。

絆(ほだ)されちまった。

俺達の笑いかけるの後ろで、星が瞬く。
本当に、お迎えが来るように。
月に帰ってしまうように。

「綺麗だね。」

が、星空を仰いだ。

理由はわからないけど
怖くなって、の手を引き寄せた。
家康と、同時だった。

『月に帰ったら、許さない。』

「帰らないよ、家康。」

『もし、迎えが来たとしても、俺達揃って迎え撃ってやる。』

「そうだね、みんな強いから。」



結局、星は流れなかった。

『三成め!』

家康は怒ったようだったけど、星空を一緒に見れて、俺は良かったぜ。

星空よりもが、美しいのは決まっていて

どんな闇の中でも輝く
笑顔を

どんな汚いやり方でも構わないから
なりふり構わず

命を懸けて
護りたいと思った。

それくらい、愛しているんだ。
信長様の妻だってわかっていても、止められねぇ。


信じてた。
護れるって。










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