第1章 Another Story
「………凛ちゃん」
いつもなら簡単に、おちるのに。
なぜだか今日は。
「なんでそんなに口開けてくれないの?」
頑なまでに歯を食い縛っていた。
「違う……っ」
「?」
「翔琉の血が、欲しいんじゃない……っ」
「え?」
「翔琉の血がほしくて、彼女になったわけじゃない……っ」
「凛ちゃん?」
「翔琉が、好きだからっ、だから……」
━━━━━━え、!?
「もうほんと、自分を傷付けないで……」
凛、ちゃん?
「お願いだから、もうこんなことしないで翔琉」
「ま、って凛ちゃん。今……」
今。
俺の聞き間違いじゃなければ。
「今俺が好きだ、って、聞こえたんだけ、ど」
「ゆった」
「ぇ」
「好きだ、って。ゆった!!好きでもないのに1年も一緒にいないし、こーゆーの、しない」
ゆった、って。
ヤバい。
照れてる凛ちゃん、めちゃかわいいんですけど。
「凛ちゃん」
「もーゆわない。絶対ゆわない。」
………可愛すぎる。
「凛」
「………っ」
「ねぇキスしたい。ってか今すぐエッチしたい。駄目?」
「だ……っ!!め、に……っ、〰️〰️っ、ずるいっ」
「何が?」
「ずるいっ、その目、その猫みたいな声っ!!」
「声?」
「声っ!!」
「━━ああ、オッケーってことでいいの?」
「〰️〰️〰️っっ」
……なんなの、この生き物。
可愛すぎでしょ。
ヴァンパイアってこんなかわいーの?
凛だからかわいーの?
「口、開けて?」
「………」
おずおずと遠慮がちに少しだけ開いた口から覗く、真っ赤な舌。
仕草ひとつひとつがほんと、かわいくて。
つい意地悪、したくなる。
「もっと舌、出してみて?」
「!?」
戸惑いながらもやっぱりおずおずと、舌を出す凛。
に。
理性なんてものは、ものすごい音を立てて今、崩れ落ちていった。