第1章 Another Story
「何さっきからスマホばっか見てんだよ、楽しくねーの?」
「楽しくない」
「またまたー。ほんとおもしれーな二宮はー」
隣でバカみたいに笑い転げる友人をとりあえず放置して、スマホへと視線をうつす。
修学旅行。
マジいらねー。
このイベント。
5日間も凛に会えないとか。
地獄でしかない。
科が違うから行き先も違う。
なんで俺、文系にしなかったかなー。
「にのみやー!!写真とろー!」
「やだ」
「えーなんでよ。記念に撮ってよー」
「凛が嫌がるから」
ざわざわざわざわ騒がしかったまわりが、一瞬で静かになる。
「あ、あー。文系の彼女?何、けっこう束縛系?」
「全然。むしろ束縛してほしいんだけどねー」
女の子の、引き攣る表情ににこりと笑って。
すぐにその場を立ち去った。
「なーなーおまえってさ、ちょっと変わったよな」
「そう?」
「なんつーかこう、もっとクールな感じだったじゃん?今まで付き合った女」
凛は。
他の女とは違う。
「去るもの追わず、みたいな」
「凛が逃げたら全力で追いかけるな、とりあえず」
「まぁ確かにいい女だよなー、凛ちゃん」
「凛で変な想像したら殺す。あと凛ちゃんやめろ」
始まったばっかの旅行。
すでに凛ちゃんロスが、ヤバすぎる。