第4章 幸せのありか
三人が雪音のもとへと着いたとき、そこにはもう一人誰かが雪音の隣にいた。
「何しに来た。野良。」
野良と呼ばれた少女の腕や足には無数の名前が刻まれている。
「やだ、ちゃんと名前で呼んで。あたし、夜卜がつけてくれた名前、大好きよ。」
「も、もしかしてこの子も、夜卜の…神器。」
「私はいつでも待ってるよ。」
小さく夜卜に笑いかける野良は、神流に目を向けると手を差し出した。張り詰めた空気の中、野良の口がゆっくりと動く。
「あら、貴方も早く私の名前呼んでね?―――。」
なにか言ったように聞こえたが、その声は風に消されて誰の耳にも届かない。雫が一つ、何処かで落ち、野良の姿は消えていた。