第4章 幸せのありか
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朝日が昇り、神流と雪音はまだ眠い頭を無理やり起こし、ぼーっとする頭で空を眺めていた。まだ、眠い。だが、体は充分休めた。
隣で大きなあくびをする雪音。朝日を背に夜卜が後頭部をさすりながらゆっくりと登ってきた。
今朝の出来事。
耳に響くほどの寝言に、二人と二頭は目を覚ました。竜胆が耐えかねて夜卜のうしろ襟を加えずるずると遠くへ引きずると騒ぎは少し収まった。だがしかし、再び耳に響く寝言にとうとう雪音がきれて、夜卜を石段の上から蹴飛ばした、というのが一連の出来事。
「っつ。いってーな!何すんだよいきなり!!」
「そっちが五月蠅いからだろ!!ぎゃーぎゃーうるさくて眠れやしないっての!」
「だからって蹴るってなんだ!蹴るって!!お前の主だぞ!!」
「うるせぇもんはうるせぇんだよ!!」
始まった口喧嘩に、やめろという気力はまだ持ち合わせていない。出るのは欠伸のみ。いい加減終わりを知らない口論に黄金が鋭く口を開いた。
「てめぇら!俺をはさんで喧嘩すんじゃねぇ!」
「「ごめんなさーーい!」」
雪音の膝から頭をもたげて唸れば、とたんに脅えて口をそろえる夜卜と雪音。神流は後ろに手をつき、まだ夜明けの群青に染まる空を見上げた。
「黄金、竜胆。帰っていいよ。呼んだら来い。それまで寝てな。」
「そうさせていただこう。いくぞ、黄金。」
「じゃぁな、お譲。」
二頭の虎は空高く飛び上がると、強い風を残して雲の隙間に消えた。金と銀に輝く毛並みはまさしく、神の使い。一瞬にして見たものの心を清めるような神々しさを残していった。