第3章 招かれた厄災
「も、モトカノさん?」
「「違う!!」」
ひよりに続き、雪音も。
「元嫁か。そうとうこじれてんな。」
「「だから違うって!!」」
「どっちにしろこじらせてるじゃねぇか。」
やいやい言いあう二人の様子を笑顔で見守る神流と天神。
境内の柵の上に腰を下ろすと、天神はゆっくりと振り向きながら言った。
「まだ、夜卜君を追っかけているのかい?」
「まだじゃのうて、また、じゃろう。命を助けてもらったんじゃ、そのうえ…」
「そのうえ?気になるのかい?」
「見ておれんのじゃ。まさか、妾があのような者に助けられるとは思いもせなんだ。…あ奴もわかってくれるじゃろうか…」
空を仰ぎみれば、くっきりとした青に光る桃色の花。風は相変わらず梅のいい香りを運んでくる。
「また二人があったら君はどうする?」
「夜卜につくに決まっておる。借りは返すのでな。」
そう言って二人の口喧嘩をいい加減止めねばと思い、柵から飛び降り四人に向かって足を進める。その後ろで、いい加減気付けばいいものを、と神流かはたまた夜卜に向かって呟いた。