第11章 拒絶
未来が質問したこととは全く関係の無いことを聞かれて、思わず変な声が漏れた
「あ…、そうですけど…。家康様は薬学にとても詳しいので…。それがどうかしましたか?」
「…へェ、なるほどな。信長だけじゃ飽き足らず、徳川家当主にも尻尾振って取り入ってたわけか、お前。呑気そうは振りして、したたかにやってたんだな」
「…あの…なにが仰りたいのか分からないんですけど」
突然の元就の言葉に未来は困惑した
「そのまんまの意味だ。それにお前、あいつがお前に気があるの分かってて、そうやって気を持たせるような振る舞いしてんだろ」
「なに言ってるんですか…っ、家康様も私もそんな…」
「何も知りませんみたいな顔して近づいて、媚を売る…さすがだな、お姫さん」
「…さっきから、なに…言って……」
まゆを一層潜めて、怪訝な面持ちで元就を見つめる
「はあ…虫唾が走る」
「………っ」
その一言が引き金かのように、未来は勢いよく立ち上がり、そのまま部屋から出て行った
「はあ……」
元就は褥の上で胡座をかき、肘を足に乗せ、垂れる額を手で押さえる
腹の奥から無性に苛立ちが湧き上がり、前髪を乱雑にグシャッと握った
眠っていた時に家康と未来の会話が聞こえてきた辺りから、毒や発熱とは違う妙な居心地の悪さを感じていた
未来に対する家康の言動や、薬学を家康から教わっていたことなど、理由も分からず面白くなかった
感じたままを言葉にして、未来を敢えて傷つけるようなことを口にした
自分が不快な思いをしたのと同じくらい、未来を傷つけたかった
そして今、残ったのは柄にも無く後悔だけ…
何がしたいのか、不可解な自身の行動に動揺して戸惑うばかり
「くっそ……っ‼︎」