第8章 故郷
「なに言って…っ。むしろこれからもこの距離感でお願いします…っ」
「くくっ、そうかよ」
「それに、お前じゃないです。未来です」
気持ちを誤魔化したくて黙っていられず、どうでもいいことまで口にした
「奴隷が言うじゃねェか」
「だから、その呼び方やめて下さい」
「そう言うお前も俺のことも呼ばねェじゃねェか」
「へ…?」
未来を真っ直ぐに見据える元就の表情が、太陽の光で逆光になりよく見えない
「呼んでみろよ…、ご主人様って」
ニヤリとしながら未来を見下ろす
「もう!絶対そんな呼び方しないですよ!」
「はは、そりゃあ残念」
気のない笑いを残して元就は甲板へ去っていった
「…もう、なんなの…」
元就がいなくなった途端、静かになることに寂しさを覚える
「はぐらかされちゃった…」