第6章 許嫁
翌日、未来を乗せた船は堺港へ到着した
「ここが堺…」
堺港へ足を踏み入れた未来は、賑わう周りの様子をキョロキョロと眺めている
「おい、よそ見してねェでついて来い」
元就の偉そうな声が未来に飛ぶ
「………」
気もそぞろだった未来は、黙ったまま元就の後ろを歩きだした
「元就様、長旅お疲れ様でございます」
深々と頭を下げる初老の男性が元就の前に立っている
「おう、変わりはなかったか、広良」
「ございませぬ。おや、そちらが例の姫君で?」
「ああ、こいつの世話は任せる」
元就は首を傾け未来へ軽く視線を向けると、気怠そうに言った
「お初にお目にかかります。某は広良とお呼びください、姫様」
広良と名乗るその男性は、恭しく未来へ頭を下げる
「あ、初めまして、未来と申します。…広良様…、よろしくお願いします」
それにつられて未来も広良へ頭を上げた
「なにどっちも腑抜けた会話してんだ。お前もよろしくしてどうする」
(元就様の家臣の方かな。すごく良識のある方だ。元就様とはどう見ても不釣り合いだけど…)
そんなことを考えていて、元就の声は未来に届いていなかった
「おい」
「あ、はい」
「なんだ、広良をまじまじ見て。そんなに気に入ったんなら、お前の見張り役としてずっとつけといてやろうかァ?」
意地悪くにやにやとする元就に未来は不機嫌そうに答えた
「あなたにはもったいない家臣の方だと思ってたんです」
「はっ、そうかよ。なら、お前は俺にふさわしい奴隷としてしっかり役目を果たせ」