第4章 松寿丸
それから数日後
信長に呼ばれた未来は、急ぎ足で広間へ向かった
(今日はみんな集まっての軍議だって聞いてたのに、どうして私が呼ばれるんだろう)
商談に同席はするが、軍議は武将たちのみで行なっている
(軍議なんて…全然分からないから呼ばれても困るんだけど…)
広間には秀吉を始め、武将が一同に集まっていた
末席に正座し、信長へ頭を下げる未来
「お呼びでしょうか、信長様…」
「挨拶は良い、面(おもて)をあげろ」
信長から声をかけられ頭を上げると、信長の御前に見覚えのある羽織を身につけている白銀色の髪をした人が座っていた
未来の方へ振り返るその人は、先日城下で声をかけられた松寿丸だった
「あなたは…」
驚く未来に笑顔を返す松寿丸
「これはこれは。…もしかして、未来様が信長様の通訳を…」
「ほお。貴様、未来を知っておるのか」
「先日、城下で見事ないすぱにあ語を拝聴しまして。その折、不躾ながら声をかけさせて頂きました。まさか未来様ともう一度お会いできるとは」
「その節はどうも…」
よそよそしい未来の態度を気にすることなく、何か閃いた顔で松寿丸が信長へ頭を下げ、口を開く
「信長様、僭越ながら一つご提案があるのですが、よろしいでしょうか」
「なんだ、言ってみろ」
「明朝、私は安芸に戻ります。折角の機会ですので、未来様も私とご同行頂くというのは如何でしょうか?」
「え…?」