第3章 出会い
未来の後ろ姿が見えなくなるまで、松寿丸と名乗った男はその場に佇んでいた
「へえー。あれが未来様…。信長が寵愛するお姫(ひい)さん、ねえ…」
「おい、あまり勝手な行動は慎め」
「なんだ帰蝶、お前もここに来てたのか?」
木に背中を預け、元就に声をかけたのは帰蝶と呼ばれた男だった
「安土の町がどの程度のものか見ておきたかったからな。それで、あの娘が例の?」
「ああ。信長の寵姫なんて聞いてきたが、なんの変哲もない平凡な女だな。だが、このご時世にあの齢で流暢ないすぱにあ語を話すのは引っかかる。あんな奴隷しかいねェ国であんな女がやっていけるとは思えねェ。きっと何かあるだろうな。少しは楽しめそうだ」
深紅色の瞳が意味ありげにギラリと光った