第5章 黒い気配
最近誰かに見られている気がしてならない
疲れてるのかな?
「ちゃんっ」
『享楽さん!』
「ちょっといいかなぁ~?」
『はい、なんですか?』
「ちゃんにあげたいものがあってね〜」
『あげたいもの?』
「そうそう♪」
鼻歌を歌う享楽さんの背中に私は黙ってついていった
「これこれ〜」
『??なんですか?』
「これ、ちゃんにあげる♪」
『え?』
享楽さんが差し出したのは、綺麗な浴衣だった。
「いやぁ〜夏だしいんじゃない?」
「ね?」
『ありがとうごさいますっ
ちょうど服に困ってたんですっ!』
「それはよかった♪」
『はいっ!』
「それじゃあ、仕事から逃げる作戦練らなきゃなぁ、じゃーね♪」
ヒラヒラと、手を振る享楽さんが、本当になにを考えているのか今だによくわからない人だなぁ、なんて思いながら、もらった浴衣をギュッと握って存在を確かめた