第1章 *声のボリュームは抑え気味に。【セベク・ジグボルト】
「じゃ!オレ様はエース達のとこに行ってるゾ!」
「わかった、行ってらっしゃい」
グリムがエース達のところに向かった後、私は作ったクッキーを持ってセベクのいる寮へ向かった。
ああ、なんだか緊張すると思いつつ、いてもたっても居られず今に至るのだ。
寮に着き、セベクの部屋のドアの前にまで来た。
よかった、偶然にも寮生がいてセベクの部屋を教えてくれて。
トントンっとドアを叩くと、部屋の中からバタバタと音がした。
なんだか騒がしい音。水の音も聞こえる。
…そして、ガチャという音とともにドアが開く。
「…なんだ?シルバーか?若様は出かけるからついてこなくていいと言われただろう…って、人間…??」
お風呂に入っていたのだろうか。
セットされたいつものセベクの髪型とは違い、無造作におろされた綺麗な黄緑色の髪。
もしかしてノックの音に気付いて慌てて出てきたのだろうか。
彼の髪からは水が滴っていた。