第8章 Good!!
「…腹減ってないんで」
それだけ言って、目の前でピタリと扉が閉じられた。
それはまるで、心の扉も閉められたかのようで。
「ああ……そう」
呆気にとられた俺は、間抜けな返答をしてしまった。
………いらないってか。
そうくるか。
とどめの、カチャリという鍵を閉める音をどこか遠くに聞きながら、しばらく俺はその場にたたずんでいたけど、こうしていてもしょうがないと、そっと踵を返した。
ダイニングにもどって、テーブルに並べられた飯をみつめる。
焼肉定食にしたから、俺でもそれなりに格好のつく食卓ができあがってるけど。
……さて、どうする
俺はホカホカ湯気がたつ茶碗を手にとる。
………別にあいつの家族でもなんでもないから、和也が飯を食おうが食うまいが別にどうでもいい。
だいたい、高校生なんだから、腹が減ったら適当に食うだろうし。
和也がどうなろうが知ったこっちゃないのが本音だ。
ただ、この調理という慣れない仕事をこなした結果が報われないのだけは残念だと思った。
それなりに頑張ってつくったし。
結局、飯は食ってもらってなんぼだからだ。
………とりあえずラップでもかけとくか。
夜中に、腹が減ったあいつがキッチンにおりてくるかもしれない。
俺は、焼肉ののった皿にラップをかけ、白米などとともにトレーにのせ、ダイニングテーブルの端によせた。
そして、少しだけ余分に作った残りを、いただきます、とつぶやき、キッチンでモソモソ食った。
いい肉だった。美味かった。
ロマなんとかって野菜も、結構いけた。