第6章 春の虹
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ずっと愛される立場だった俺は、二宮くんと付き合うことによって、意外と雄の気質もしっかり持っていたことに、初めて気づいた。
もちろん、タイミングもあるし、二宮くんの気持ちもあるし。俺がそっち側になって…うまくできるかもわかんないし。
だから、キスから先にいきなりステップアップしていこうなんて思ってない。
最初は清く爽やかなお付き合いから、と思っているんだよ。
だけどさ…
「雅紀さん、ケーキってイチゴのもありますか?」
「え?あ、うんうん。買ってあるよー」
やった、と微笑む二宮くん。
「…………」
その可愛い笑顔に俺はやられっぱなしだ。
係長って呼ぶのは、職場だけにしてくれって、俺がワガママを言って、二人きりのときは名前を呼んでもらうようになったのはいいもの。
「サトは甘党だったけど………松本ってケーキ好きなんですか?」
キッチンカウンターにおいてるケーキの箱を覗いて、首を傾げてる二宮くんは、あの日以来、俺に対するガードを一切なくしたせいか、無防備でめちゃめちゃ可愛い。
「雅紀さん?」
「………へ?」
やばい、みとれてた。
「え、あー……っと潤?あいつは、モンブランが大好きなんだよ」
「…………へぇ、意外」
ふーん、と頷く二宮くんを抱きしめたくなる衝動を押さえるのに苦労する。
俺は、誤魔化すように時計に目を走らせ、そろそろ来る頃だね、と呟いた。