第4章 夕虹
脱衣所からタオルをつかみ、玄関から動かない智に歩み寄る。
「どうしたの。傘忘れていったの?」
ポタポタ滴のおちる前髪を、くしゃりとかきあげてやったら、智は小さく頷いた。
「……梅雨なんだから。持ち物に傘はマストでしょうよ」
俺は苦笑いしながら、智の頭をもしゃもしゃ拭く。
黙って拭かれるままの智。
……なんかあったのかな?と、直感的に思う。
困ったように口を引き結び、何もいわない智は、びしょびしょのコンビニの袋を差し出した。
「?なに?冷蔵庫いれとくの?」
中身は、智の好きなミルクティーとなぜかチョコポッキーが入ってた。
夜食に食べるつもりだったのかな。
「……うん」
「そ。わかった。とりあえずシャワー浴びといでよ」
俺は、智の腕をひいて、入ってすぐの脱衣所におしこむ。
智は、おとなしくごそごそとTシャツを脱ぎ、ズボンを脱ぎ始めた。
客にひどいことでもされたのかな、と、心配になったけど、背中も下肢も、見える範囲の肌は、白く美しいままだ。
痣もないし、傷もない。
落ち着いてから、話を聞いてあげようと思った。