第6章 春の虹
二宮くんは、俺たちをみつけてふわりと笑んだ。
「お疲れ様です」
「お…う。お疲れ様」
「お疲れ!ニノ」
そんな二宮くんが、どうしようもなく可愛い。
いや、そもそも可愛いという形容詞を成人男子に使っていいものか。
俺が悶々としていると、
「………どうしたんですか?係長」
近づいてきた二宮くんが、横から心配そうに俺をのぞきこんできた。
ちっ……近い!
俺は、体をそらせて、全力で否定した。
「いい……いやいやいや。なんでもないなんでもない」
すると、ヨコがあきれたように苦笑する。
「動揺しすぎや……相葉ちゃん」
「え?」
二宮くんが不思議そうな顔になる。
俺はますます慌てた。
動揺してるなんて、余計なこと言うんじゃないよ!
俺の必死の視線を、ヨコは、ふんと鼻であしらい、話をそらせた。
「いいや、なんも。で?今日はなんかかわったことあったん?」
「あ、えっと、城島さんが見積もりだしてくれたんですけど……」
どれ?と、いう2人の会話をなんとはなしに聞きながら、俺は取り繕うように、パソコンのマウスを動かした。
ブンという微かな音とともに、さっきまでの入力画面に戻る。
けど、なんだか集中も切れて。
俺は、画面を凝視するフリをしながら、汗ばむ額に手のひらをあて、前髪をうしろになでつけた。
二宮くんの気配が心地よい。
………本当に?二宮くん。
ヨコの言うこと信じていいの?