第6章 春の虹
コホッと咳をしたと同時に、ぼんやりしてる視界が急激に開けた。
…………夢
愛する人に握られていたと思っていた自分の左手は、枕の下敷きになっていて、それで温かかったのかと理解する。
………夢か……
もう一度コホッと咳をして、ゆっくりと寝返りをうった。
頭痛はおさまっていたが、かわりに喉が焼けるように痛かった。
しかも尋常じゃないくらい汗をかいてるせいで、体が気持ち悪い。
水が飲みたいと思ったけど起き上がる気力もなく、ゆるゆると時計に目を走らせた。
…まだ真夜中だ。
はぁ………
片手で湿っぽい前髪をかきあげる。
……久しぶりに昌宏さんの夢を見た。
記憶のなかの彼は、相変わらず優しくて愛おしい。
あの人が亡くなったころは、毎日毎晩彼の夢を見続けたものだった。
幸せな夢を見て、起きて、この世にいないことを実感して涙して一日が始まる。
そんな時間を何ヶ月も何年も経て、ようやく夢を見ても泣かなくなり、キングサイズのベッドに1人で居続けることにも慣れてきたのだ。