第4章 夕虹
……とにかく遠くへ行かなきゃ
俺は、あいつが逃げた方とは逆にむかって走り出す。
倒されたときに強打した肩や足が、思いのほか痛い。
それでもなんとか、現場からある程度遠ざかった場所まで走り、あまりにも呼吸が苦しくて立ち止まった。
「はぁ……は、ぁ」
俺は、激しく息をつきながら、その場にうずくまる。
体を支えられず、その場にペタリと座り込んだ。
とたん込み上げてくるものに耐えきれず、その場で吐いた。
周りには酔っぱらいと思われてるだろう。
大丈夫か兄ちゃん、と通りすぎざまに、誰かに声をかけられたようだが、顔をあげれなかった。
吐いても吐いても気持ち悪くて。
やがて、体中の水分を出しきった俺は、路肩にぼんやり座り込んだまま動けないでいた。
どうして、こんなめにあわなきゃいけないんだろう。
男でも夜の街ってこんなに危険なの?
いろんなことを考えてると、ふと、尻ポケットの違和感に気づく。
触るとずっと振動してるスマホのようだった。
震える手で取り出し、画面を撫でると、浮かんだのは、大野さんの名前。
俺は、思わずタップした。
迷惑かかるかも、とか、思う前に、誰かに現実に引き戻してほしかった。