第4章 夕虹
Jun
雨は昔から好きじゃない。
もともとクセっ毛の髪はまとまらず、下手すりゃ
クルクルになるし、靴も鞄もびしょびしょになるし。
加えて、学生になってからは、満員のバスも、頭の悪そうな女生徒たちの金切り声も、換気の悪い車内の空気も何もかも嫌で、雨の日は学校に行くことが苦痛だった。
さぼりたかったけど、母さんがパートが休みで家にいるから出ないわけにはいかず。
金もないから、結局登校せざるをえない。
外界を遮断するように耳に突っ込んだイヤホン。
そこから流れるビートルズを聞き、これ以上テンションがさがっていくことをなんとか持ちこたえさせた。
今日唯一ラッキーだったのは、座ることができたこと。
ただし一人席だからすぐそばまで立ってる人間がせまってくる。
それはそれで鬱陶しいから、俺はできるだけ壁にもたれ顔を背けて窓の外を眺める。
激しく水滴のつく窓ガラスは外の雨の強さを物語り、バス停から学校までの距離を思うと、このまま終点まで乗っていってやろうかとすら思った。