第2章 ブックマン補佐の彼女①(ラビ)
アオイの聞込み調査が始まって、どのくらい経っただろう。
「へぇ〜!隣町でそんな奇怪現象があるのね!」
そんなに時間は経っていないが、体感的に物凄く時間が過ぎているような気分になる。
「こんなに面白い話聞けてよかった〜!お兄さん達、ありがとねっ♪」
アオイ流の真面目な聞き取り調査は思いのほか実ったようだ。デマかもしれないが、それなりの情報が手に入ってアオイがホクホクと嬉しそうにしているのがわかる。
(アオイが嬉しそうだと、オレも嬉しいさ)
だけど、ブックマン補佐の本職の仕事ではなく、黒の教団に身を置く為のファインダーの仕事っていうのが面白くねーさ。
しかもオレ、放ったらかしにされたし。
それに真面目に仕事してる、とは言え……
「ネェーちゃん飲め飲めー!」
「いただきまぁーすっ!」
「わははは!イイ飲みっぷりだなあ!」
それにしても、飲み過ぎじゃね?
いつもは酒なんて好んで飲まねーし、男共に合わせてるとはいえ、いつものアオイらしくナイ。
「ッはー!仕事後のお酒は美味しいねっ!いくらでも飲めそう!」
(飲めねーだろ!とっくに飲める許容範囲超えてんだろっ?!)
ジョッキを高々と掲げるアオイにハラハラしながらラビは様子を見守る。
(…つーか、何でオレがこんなコソコソと…)
それはアオイが怒るから。
変に心配すると「余計なお世話!」と嫌がる。
確かにオレのしている事は余計なお世話だ。
アオイは酒に呑まれるような事はしないし、ちゃんとオレ(とジジイ)の元に帰ってくる。
「…そーだよな、」
宿でアオイの帰りを待とう。
こんなモブ男達を相手にアオイがヘマをする訳がないのだから。
ラビはそう思い重い腰を上げ、食事代の支払いを済ませ始める。
「ネェーちゃん飲み過ぎだろ!……俺等とゆっくり休めるとこ行こうぜ?」
「そーそー!なんならゆっくり飲み直そうぜ!」
(……身も蓋もねぇ誘い文句さね、オイ)
男共の下品な誘いに呆れ返る。
「ふふっ、お兄さん達、私でいーの?」
そこには見たことのないアオイが居て、
(―――――は?)
オレの中で、何かがプチンと切れた。