第2章 ブックマン補佐の彼女①(ラビ)
今日も今日とて、いつもの“オレ”を演じる。
―――そう。
アオイの幼馴染みであり、兄妹であり、そして女にダラしないオレを。
だって、オレの気持ちに気づいたら、アオイはきっとオレの元を去って行く。
真面目な奴だから、ブックマンとしてのオレを優先するだろう。
だけど、それだけは耐えられない。
だから今日も当たり前に、この想いを押し殺す。
「でもって、あん時のジジイが〜!」
今回はジジイ抜きの、オレとアオイの2人だけの任務。
嬉しくない訳がない。好きな奴と2人で居られるなんて。
アオイと2人で過ごせる事が嬉しくて、いつもより多弁になっちまう。
「……しーっ!ラビっ、声のトーン抑えて」
「ん?」
「あの男性2人組、奇怪現象の話してる」
「あらかた噂話だろ?」
「まぁ、大体デマというか。イノセンスに至らないんだけど」
つい先程までオレだけを見てたのに、アオイはあの男2人組に釘付けだ。
アオイの顔つきはブックマン補佐ではなく、ファインダーのものへとなっている。
「今日はもう良くね?」
「いやいや、仕事したのはラビだけだよ」
AKUMA沢山壊してくれたし、とオレを褒めるも既に眼中無しで、男達をロックオンしている。
「そんなことねェーさ!オレが壊した町の修復依頼とかしてくれたじゃんか」
「それは当たり前だよ。それに、今回の任務はイノセンス外れだったし…」
挽回しないと、と言うなりファインダーの団服を脱ぎだした。
どうやらファインダーのお固そうな格好は今から行う聞き込みには不向きだと判断したらしい。
「ッ、もー休もうぜ?」
「うん、これだけ聞き込みしたら…先に休んでてね!」
「アオイっ!」
バサッと団服を脱ぎ捨て、席を立つアオイ。
そして男共のテーブルへ蝶のように華やかに舞立っていった。
「お兄さん達、面白い話してるのね」
「あ"ぁ?…お。ネェーちゃんも興味ある?」
「もちろん!だから私も混ぜて?」
「美人は大歓迎だあ!」
男共の間の席にアオイは招かれ、酒を片手に乾杯をする。
(…アオイは、真面目に仕事してるだけさ)
この不要な感情を押し殺すために、オレは水の入ったグラスを一気に飲み干した。