第13章 13
かかしサイド
瞬身の術で森を一気に駆け抜けると、開けた場所にでた。
川の水の音が心地よく聞こえる。
あの時ほどではないが、暗闇にホワホワと小さな命の光が舞いあがっていた。
持ってきた小さいライトで照らすと、座ってぼんやり空を眺めている背中をみつける。
「えま」
そう呼ぶと、びく!っと小さな肩があがった。
まさか俺がくるなんて思ってもいなかったんだろう。
「かかし先生‥?」
えまの隣に座ると
「もー心臓に悪いですから。」
と彼女はふてくされた。
俺たち2人はしばらく黙ってその幻想的な光景をながめた。
沈黙は苦でなかった。
それはとても穏やかな時間。
「かかし先生…手…繋いでもいいですか…?」
そうするのが当然と言わんばかりの愛のあふれる時間。
ほんとは俺から言うべきだったな。
ま、えまは年上だったか。
なんて思いながら、にっこり笑って彼女の手を握った。