第12章 12
月日は流れて、うちはそのままかかし先生の側近として働いている。
香蓮さんのことを二人とも優先していたため、すっかり英雄達のお墓参りに行き忘れていた。
今日かかし先生の予定の調整もついて、一緒に英雄達のお墓参りをすることになった。
今でも思うけど、ほんとに先生が長門の輪廻転生術で生き返ったことはうれしく思う。
そうじゃなかったら、もうほんとにこの世にいなかったんだなって思うと、隣で一緒に手を合わせてくれる存在はとても大きい。
あーこの人が生きてるだけで十分じゃん…なんて思ってしまうけど、人間とは欲深いもの。ほんとは、もっと深く深く繋がりたいものだ。
かかし先生のお父さん、さくもさんのお墓にきた。
まぁまず言っておきたかったのが、お宅の息子さん、別の世界でもかなり人気ですよ(笑)ってことかな。あえて説教するなら、なんでかかし先生を一人置いていったんですか!?涙 ってとこか。
うちは今自分の世界のかかしファンの気持ちまでも代弁しているのだ。
あまりに思うことが多すぎて百面相みたいになっているうちに気づいたかかし先生が「そんな父さんに話すことあったの?」と笑った。
英雄達のお墓まいりも終わり、最後に香蓮さんのとこにもきた。
「香蓮さんお久しぶりです…」
そういってお花をいける。やっぱり自分の力をつかって、あなたを助けるべきだったのでは?
後悔のような、胸をぐっとつかまれる感情がこみ上げる。
『私は、実際こうして死んでみて、未練がない。えまと会わずして、あの抜け殻みたいになったまま死んでたら、私未練たらたらだったんだろうけど、えまと会って、かかしとえまといい時間を過ごせて、未練がなくなっちゃったんだわこれ!』
『ま、あとは二人次第ってことよ。私は許してんだから、気遣いなんてやめてね。あとお墓の前で二人で謝るのも‥ギロリ』
香蓮さんの言葉を思い返して、ぎくりとする。
あ、やべ…今香蓮さんのお墓の前で、謝るとこだった…汗 危ない危ない…(笑)
香蓮さん、私36歳になりました。まだ結婚してません。
あ、笑わないでくださいよ。あと約束まで4年ありますからね(笑)40歳独身だったら、笑ってもいいですからね。とりあえずうちも、かかし先生も元気です。
香蓮さんもあっちで元気でいてくれること願ってます。
「行こうか」
かかし先生に言われ、夕暮れを背にそのままお墓をあとにした。
