第11章 11
気が付いたら、病院のベッドで、かかし先生は隣にすわってうちを見下ろしていた。
「気が付いたか?いったいどうした?」
ゆっくり上体をおこした。
「香蓮さんに…会ってきました…」
それから、私は香蓮さんに言われたことをすべて話した。
かかし先生もオビトとお別れするとき精神世界で話してたから、すんなりと話しを受け入れて聞いてくれた。
「あいつ、そこまで言ってたの?
もーーーー………
しかも何その元気の良さ。死人とは思えないね。
ほんとかなわないな~…」
そういって、かかし先生は髪の毛をぐしゃぐしゃとした。
「…ですね(笑)なんか逆に元気もらってしまいました…」
しばらく沈黙が続いた後、かかし先生が口を開いた。
「俺もさ、いい大人だからなんとなく自分の感情には気づいていたんだけど、やっぱり香蓮がいたし、彼女は本当に大切だった。だから…新しく出てきた感情に正直疑いもあったんだ。」
そりゃそうだ。
かかし先生が本当に香蓮さんを大切にしていたのは、誰がみても一目瞭然。
あんな多忙な火影業務の中、里外へ出る以外は欠かさず毎日香蓮さんのもとに来ていたのだ。
「でも、えまに対する芽生えた気持ちが本物なんだって気づいたのは、えまとホタルを見た後からかな…」
あー…
あの時は無我夢中でかかし先生を癒したかったんだっけ。
私は黙ったまま、静かに聞いていた。
「あの時…ほんとに自分が思ってた以上に俺の心が疲れてたんだ。あの時の心が洗われる感じ、救われる感じ、今でも忘れられない。」
胸がほんわかするほど、かかし先生の言葉にありがたみを感じた。
「…でも今は正直、いろいろ自分自身でも気持ちを整理したいんだ。もう自分の感情を抑える必要もないってのはわかったけど、やっぱり少し時間が必要かな…」
「はい…もちろんです。私自身も、いろいろ考えて整理したいです。香蓮さんのことも、自分の能力のことも、かかし先生に対する気持ちも…」
「そっか…。えま、ほんとにありがとう」
そういってかかし先生はうちの右手を握った。
「はい…」
とだけ、返事をして、私も先生の大きな手を握りかえした。