第1章 ひまわり×家康
「…やっぱり今からでも帰ってくれませんか、お二人とも。」
「着いたばっかりだろ、随分な物言いだな。」
「心配せずとも俺たちは花を見に来たんだ。変な気は起こしたりしない。」
「そんな気起こしたら斬りますから。」
「怖い怖い、遠くへ逃げておくか政宗。」
冗談めかして二人が向こうへ立ち去ろうとしたその時、小屋の扉が開く音がした。
「やっぱり、こっちの方が涼しいな。」
「っ…!」
出てきたちよの姿を見て、あんなに嫌だと思っていたのに何よりもまず可愛いと思った。白い生地のわんぴーすがヒラヒラと風になびき、麦わら帽子のおかげで爽やかさが増している気がする。ちよがもつ柔らかい雰囲気と、服の軽やかさが掛け合って…とっても似合っている。
頭の中では感想がどんどん飛び出すのに、あんなに嫌がった分、天の邪鬼が邪魔をして口には出せなかった。
「ほう…思ったよりも愛らしい着物だな。」
「本当ですか!光秀さん達に説明した時の反応がイマイチだったから心配してたんですけど…」
「よく似合ってる、ちよ。それに、光秀が褒めてくれるなんてそうそう無いぞ。」
「確かに…ありがとうございます!」
二人に褒められてご機嫌なちよを見て、またあの感情が襲ってくる。他の男の言葉で喜ばないで、嬉しそうな素振りを見せないで。
これ以上、こんなに可愛いちよを誰にも見せたくない。
「家康、この服どうかな?…ってうわっ!」
思わず、ちよの手を引いていた。そのまま畑の中へ突き進む。ひまわりは背が高いから、中まで入れば誰にも見えないはずだ。
「待って家康、二人も…」
「俺たちの事は気にするな。それなりに花を楽しんだら先に帰る。」
「あぁ、見たいものは見られたしな。」
光秀さんのからかいが癪に触るけど、今はそんな事どうでもいい。
畑の真ん中まで行くと、思った通り、俺たちは二人だけの世界に閉じ込められた。ひまわりに囲まれたちよの姿が陽の光に照らされて、まるで絵に描かれたように綺麗なその風景に、言葉がすぐには出てこない。
「い、家康?」
「…」
「どうかなこの服、頑張って作ったんだ。」
「…反則だよ。」
「えっ?きゃあっ!」