第1章 ひまわり×家康
___だから、その日の朝から馬を降りる直前までは薄手の着物を着てもらうことにした。思っていたより涼しくて良かった。その上幸いにも、ひまわり畑の近くには使われていない小屋があると部下の偵察で分かっていたから、そこで着替えてもらうことにする。出来る限り、ちよの肌を晒したくない。
「なんだちよ。例のわんぴーすは着ないのか?」
「ううん。せっかく作ったから汚れないように着いてから着なよって、家康が。
「それはそれは、随分な可愛がりようだ。」
「…光秀さん?」
「何を怒っている家康。わんぴーすの話だ。」
絶対に違う。俺の心理とこの状況を面白がっている。
光秀さんと政宗さんはそういう人だ。
よりによってこの二人が一緒に来ると聞いた時は嫌な予感がしたけど…やはり当たっていた。ひまわり畑までのそう遠くない道のりが、二人のからかいのせいでやけに長く感じた。
そして、しばらく馬で駆けると、目の前に今までに見たことのないほど明るい景色が広がった。
「うわぁ!本当にひまわりが咲いてる!」
ちよが話していた通り、大きな黄色の花弁が青空の下でいくつも揺れている。今まで見てきたどんな花より大きいかもしれない。堂々とそびえ立つその姿はまさしく圧巻だ。
「へぇ、派手でいいな。気に入った。」
「政宗ならそう言ってくれると思った!」
確かに、聞いていた話に勝って綺麗だと思う。そしてそのひまわり畑以上に、すごいすごいとはしゃぐちよの姿の方が目に入る。子どもみたいに無邪気に目の前のものに向き合うその姿が、口には出さないけどやはり可愛い。
「みんな、畑の中まで入ろうよ!」
「その前にちよ。着替えなくていいのか?このために作ってたんだろう。」
「あっ、そうだった。ちょっと待ってて下さい!」
光秀さんの言葉に促され、ちよが風呂敷包みを片手に空き小屋に入っていく。
そこから早く出てきてほしいような、ほしくないような、矛盾した思いが胸でせめぎ合う。