第2章 しろつめくさ×秀吉
ここに来て、つらい思いを変えることができて良かった。頭に乗る花冠と、内に明るく灯り始めた感情で、全身が暖かくなったみたい。
「シロツメクサが咲いてたのも何かの縁なのかな。この花にはね、幸運とか約束とか、いろいろな意味が込められているんだよ。」
「へぇ、縁起の良さそうな花だな。」
「あとね、シロツメクサは葉の部分が三つのものが多いんだけど、四つの葉のものを見つけられると願いが叶うって言われてるの。四つ葉のクローバーっていうんだけど。」
「四つか…見渡す限りなさそうだが、本当にあるのか?」
秀吉さんが自分の周りを見渡して、信じられないという驚いた様子を見せる。
そう簡単に見つからないから、願いを叶えるなんて強い力をもつと思われてるんだろうな。
「ないかなぁ…秀吉さんが無事に帰ってきますようにって、お願いしたいな。」
「ちよ…」
「少し探してみてもいい?」
「…あぁ、いいぞ。ありがとな。」
この日は半刻ほど野原の中を探してみたのだけれど…やはりすぐには見つからなかった。日も沈みかけていたから諦めて帰ったけど、四つ葉のクローバーを見つけて渡したくて、以降私は毎日探しに通い続けた。
秀吉さんはというと、出陣に向けて準備を進めていった。寝る前に顔を合わせるだけの日も増えて、その度に今日も見つからなかったと報告して…
ついに出陣も次の日に控えても手に入れることはできなかった。
「こうなったら…」
私は最終手段として考えていたあるものを、一夜で急いで準備することにした。
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「それでは…信長様、出陣致します。」
「あぁ。貴様の働きぶりに期待する。」
出陣当日。安土城の門前には軍を連ねて準備を整えた秀吉さんの姿があった。その横には同行する三成くんの姿も。
信長様の隣で見送る私にも、兵たちの高まる士気が伝わってくる。この戦に向かう空気はいまだに緊張してしまう。
「ちよ、行ってくるな。」
「あっ、秀吉さん…!」
馬に登って今にも出発しそうな秀吉さんのもとに駆け寄る。そして急いで作ったアレを袂から取って差し出した。