第2章 しろつめくさ×秀吉
「ん、可愛いな。よく似合ってる。」
あ、またこの好きな笑顔だ。ドキンと大きく胸が脈打つのを感じる。甘ったるい幸福感が胸を支配して、思わず私の顔まで緩む。
「ふふっ…嬉しい。」
「うん、その笑顔だ。やっと和らいだな。」
秀吉さんが私の肩を寄せて、ふわりと包んでくれる。耳元に寄せられた秀吉さんの口から、優しい声がした。
「ちよ…もうすぐ俺が出陣するのが心配なんだよな。」
「っ…」
頭にポンポンと秀吉さんの手のぬくもりが落ちてくる。
心のもう半分を占めていた隠しきれなかった思いが溢れ出す。きっと見透かされてたから、こうやって慰めるみたいに撫でてくれるんだ。
「今日は楽しそうだったけど…少し元気がなかったもんな。」
「…やっぱり、秀吉さんにはお見通しだよね。」
「惚れた女の変化ぐらい、気付くに決まってる。」
少し体を離して見上げると、秀吉さんは困ったような、申し訳なさそうな顔をしている。
秀吉さんは太平の世のために毎日お仕事を頑張ってるし、時にはその命をかけて戦う。私はその信念も含めて秀吉さんが好きだ。
それに、秀吉さんは必ず帰ってくると約束してくれる。なすべき事を成し遂げ、命を落とす事なく帰ってきてくれる強さと思いがある人だ。
私は結ばれた日から彼を信じて待つと決めた。それは今も変わりない…だけど全く不安に思わず能天気に送り出せるわけもなくて…
「きっと戻ってきてくれるって分かってるんだけどね…信じてないみたいでごめんね。」
「待たされる側が不安に思うのは当然だ。一度戦に行けば、長い間状況も分からないからな。
それに、心配してくれるのはお前が俺のことを想ってくれてる証でもある。申し訳なく思わなくていいぞ。」
証か…確かに、秀吉さんのことを好きになればなるほど、出陣のつらさは増していく気がする。
このつらさが愛の大きさであるなら…この思いがどこにいても秀吉さんに届いて、彼を守ってくれないかな。
「…分かった。心配ばかりで申し訳ないなって思うのはやめる。
その代わり、秀吉さんの無事を祈る前向きな気持ちに変えるからね。」
「ちよに祈られているなら心強い。ありがとな。」
「うん!」